kodama Gallery
ignore your perspective 15

Press Release
 拝啓 時下益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
 児玉画廊|京都では3月30日より4月27日まで貴志真生也、高石晃、田中秀和、中村奈緒子、森下明音、吉田純也の6名によるグループショー ignore your perspective 18「Fascinating Analysis」を下記の通り開催する運びとなりました。本展は、この6名が作品制作の典拠としているであろう6つの要素を各頂点とした多角的視点から美術制作のアティテュードを分析し考察する展覧会です。

[素材] 貴志真生也
 単なるモノとしての素材が如何にして「作品」へと変わるのか、その境界を探るように、立体、インスタレーションを制作し続けて来た貴志。素材をいろいろと触りながら、頭の中でイメージとミュレーションを繰り返し推敲して得た方法で加工を施す、そしてその結果がまた新たなイメージの典拠となって次の行程へと進むのです。素材を起点としてイメージの発想と飛躍を繰り返しながら、不必要な意味や無用の構成物を排除し、極力シンプルな形態へと落とし込むことで、端的ながら誰もが見たことのないものが出来上がるのです。

[幻夢] 高石晃
 高石の作品は、夢の中での混沌とした出来事のような不条理を道理として、あるいは結果から原因を導き出すような逆算的な思考法によって、非現実的な情景を描き出します。寝覚めに朧げな断片を辿って夢の追体験をするように、謎めいた夢想が手中から逃げ出さない内に留め置くような強く荒い筆触によって描かれています。最近作ではとある線描をおもむろに描いた後に、それを取り巻く背景を加筆していくという作品を制作しています。背景に加えられたものとの関係性によって始めて最初に描いた線の意味合いや理由が与えられるという溯行的制作方法を敢えて取るのは、高石の作品イメージの現出が夢か幻のように類型的なやり方では測りがたいものであることを示しているのでしょう。

[引用] 田中秀和
 田中は、自身のペインティングやドローイングの線描を作品間で引用/複製することによって、遺伝情報のように時間と空間を経て伝達される自律的な存在であるかのような抽象絵画を追求してきました。引用された線描はその都度整形やリサイズなどの新たな手を加えられ、際限なく進化を続け、さらに新たな手法へと拡張していくのです。今回発表する作品は、普段のキャンバスやウォールドローイングではなく、巨大なポリエステルフィルムに過去作から引用した線描をラテックスでドリッピングしたものを、中空に吊り上げた状態から落下させて無造作にグシャグシャにするものです。フィルムの透過性によって幾重にも折り重なった襞の中で線描が複雑に交錯します。平面性から空間性への飛躍が落下の瞬間に一挙に引き起こされます。

[手法] 中村奈緒子(新人)
 中村は主にインスタレーション作品を制作しています。2枚の板に延々と穴を開けて延々とビニール紐を通してモチーフを描く刺繍を引き延ばした様な作品、木材を膨大にカットして小口に色を塗ったものを積み上げて巨大なモザイク壁画の様にした作品など、無限にも思える作業量を必要とする行程を敢えて選び、過度に手作業へと没入していくことによって制作されます。ドット絵のようなローテクさや、手芸的で愛らしい表現や親しみやすい素材・形状でありつつも、しかし軽く狂気を感じさせる程に「延々と続く手仕事」によって、中村は手からイメージを形成しているのだと強く感じさせます。

[構造] 森下明音(新人)
 パラフィンや油彩など元々は液体状の色彩が、塗り固められて物質性を帯び最終的に固定されるそのプロセスに作品の主題を求めた作品を制作しています。ロープ、ワイヤー、メッシュといった心材を呑み込む様にして凝固した色彩の塊が、どのようにして空間に屹立すべきか、自立する構造的な方法論を探る様にして作品の在り方がシフトして行きます。吊り下げる、台に乗せる、突っ張る、もたれ掛かる、など様々な様態を示しながら、その都度それを具体的にクリアするための実際的な構造が示され、色彩や造形と並んで作品を成す一つの重要な要素として認識されています。

[詩情] 吉田純也(新人)
 吉田は平面、インスタレーション様々な作品を制作発表しています。思い描いたイメージを思うままに描き、そのものの在る様に意味合いを掬い上げて作品とするような詩作にも似た作品は、物質性の背面に有る吉田の内面性、精神性の表出と捉えられます。本展では、ごく私的で感情的な物であったり、誰かの忘れ物か廃品のようなどうでもよさそうな物など、つかみ所のない雑多な物や要素が散逸したようなインスタレーションを展示します。作品によって何かメッセージを発するというよりも日記の端に吐露した思考の断片のようにささやかな、しかし吉田個人の存在定義に関わる様な根元的な主題を、訥々とそこに晒しているのではないかと思えます。

 これまでのignore your perspective で児玉画廊ならではの視座として示してきたような作品同士の緊密な相互関係や渾然一体といったニュアンスではなく、それぞれの作家が共存しつつ、なお一線を引いて不干渉でもあるような、引力と斥力の絶妙な均衡を取った群像として6名の作家を紹介致します。つきましては本状をご覧の上、ご高覧賜りますよう何卒宜しくお願い申し上げます。



敬具
2013年3月
児玉画廊 小林 健



記:

展覧会名: イグノア・ユア・パースペクティブ17
「Fascinating Analysis」
出展作家: 貴志真生也 / 高石 晃 / 田中秀和 / 中村奈緒子 / 森下明音 / 吉田純也
会期: 10月20日(土)より11月24日(土)まで
営業時間: 11時-19時 日・月・祝休廊
オープニング: 10月20日(土) 18時より


同時開催: Kodama Gallery Project 37 五藤 彰「TRY-MEN」

お問い合わせは下記まで

児玉画廊
〒601-8025 京都市南区東九条柳下町67-2
T: 075-693-4075 Fax: 075-693-4076
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